訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる

21. 重なる想い

個室を飛び出し、お会計を済ませて日本料理店を出たところで、ようやく私は足を止めた。

ここまで要さんの手を勝手に引っ張って来てしまったので、一度離してから要さんを見上げる。

すると要さんは耐えきれないとばかりにプッと吹き出した。

苦しそうにお腹を抱え、目には涙を浮かべて笑っている。

「ははははっ、本当に亜湖ちゃんは最高だね。一切遠慮のない率直な物言いはさすがだった」

どうやらツボに入ったらしく、要さんは眼鏡を外して目に滲む涙を指で拭っている。

そんな笑顔を見ていると、私もフッと肩の力が抜けていく。

ずっと無理して外面を取り繕っていたため、知らず知らずのうちに疲れが溜まっていたみたいだ。

 ……それにしても、要さんの顔見るのなんだか久しぶりだなぁ。

といっても約1ヶ月だ。

それなのにもうずいぶん長い間会っていない気がしてしまう。

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