訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
相変わらず眩しいほどのイケメンだけど、ルックスだけでなく葉山要という人間そのものが、恋を自覚した今の私には眩しく映る。

 ……やっぱり他の男性に目を向けるとか無理だ。前よりももっと気持ちが加速してる気がする。

ふいに先程抱きしめられたことを思い出し、今更ながらに胸がドキドキと騒ぎ出した。

あの場で恋人らしく振る舞うために演技としてしたことであって、本気にしてはいけない。

たぶん要さんは、私の望みを叶えるという条件をただただ真面目に遂行しただけだ。

 ……それにしても、そもそもなんでここに……?


要さんに聞きたいことはたくさんあった。

お見合いの場では即興で要さんのアドリブに私も全力で乗っかったけど、あそこを脱した今、なぜここにいるのか、どうやって知ったのか等説明して欲しい。

それを確認しようと、笑いが収まって落ち着いてきた要さんに向かって訊ねる。

「要さん、さっきはありがとうございました。ですが、どうして私のお見合いのこと知って―――……」

「その説明は後でするよ。行こう」

だが、その質問を途中で遮られたかと思うと、続いて今度は要さんが私の手を取って、スタスタとどこかへ向かって無言で歩き始めた。

「えっ、要さん? どこ行くんですか?」

「ゆっくり2人で話ができるところ」

行き先を問いかけるも、返ってきたのはその一言だけだ。

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