訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
それだけ私が演じている愛され女子像は完成度が高いのだろう。

一目惚れしたと言われてもちっとも嬉しくないし、1ミリも心が動かされない。

今日に至っては急いでる中足止めされて、ただただ迷惑だ。

そんな心の内は綺麗に包み隠し、私はうるっと目を潤ませつつ、本当に申し訳なさそうな顔を作って男性を見た。

「お詫びを申し出てくださるなんて、とっても誠実な方なんですね! でも大丈夫です、気にしないでください。私の方にも落ち度はあったと思うので。あの、すみませんが大切な人を待たせていて、すごく急いでいるので失礼しますね……!」

相手を褒めつつ、お詫びはハッキリ断り、一目惚れ云々は総スルー。

おまけに“大切な人”と彼氏の存在を匂わせて、これ以上迫られるのを回避した。

うん、嘘はついていない。

人ではないけれど、『グチグチノート』という大切な相棒を待たせていて急いでるのは事実だから。

私はそれだけ一方的に述べると、どう反応したらよいか分からず悩ましい表情を浮かべる男性の次の言葉を待たずして、再び速足で歩き始めた。

そんなちょっとしたハプニングに邪魔されつつも、それから約10分後。

 ……やっと着いたー! お待たせ、私の『グチグチノート』!

静かな路地裏に佇む、趣のある外観の『珈琲ろまん』を目の前に私はちょっとした達成感に浸る。

しかしすぐに今度は緊張感が私を襲う。

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