訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
すると次の瞬間には、ふわりと柔らかな感触が唇へと落ちてきた。

そっと触れるような軽いキスだ。

次第にチュッとリップ音がする啄むキスに変化し、それが何度か繰り返される。

戯れるような口づけに胸をときめかせながら応えていると、要さんがふいに片手で眼鏡を外した。

そこから雰囲気が一変する。

口づけはどんどん深くなっていき、唇がぴったりと重なり合う深いキスに呼吸が苦しくなった。

空気を求めて息継ぎをすると、開いた唇の隙間から今度はぬるりとした舌が侵入してきた。

「んっ……」

思わず小さく喘ぎ、吐息が漏れる。

 ……どうしよう、頭がクラクラする……!

舌が絡み合う濃厚なキスに、私はもう腰が砕けそうだ。

唇が離れていく頃には、体から力が抜けてくったりしてしまい、要さんに若干もたれかかる状態になってしまった。

「……俺の気持ち伝わった? 亜湖ちゃんにしかこんなことしないし、したいとも思わない。俺は本気で亜湖ちゃんのことが好きだし、恋愛コンサルで恋人ごっこするんじゃなくて、本当の恋人になって欲しいと思ってる」

あんな気持ちのこもったキスをされれば、いくら私でももう勘違いはしない。

要さんの本気は、唇からも、言葉からも、表情からも、ヒシヒシと伝わってきた。

それだけに胸のときめきが半端なくて、尋常じゃないくらい恥ずかしい。

 ……たぶんこれ、私が素の状態だからだ。

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