訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
過去の彼氏達の時は全員、素をひた隠し、取り繕った外面用の仮面を被った私で接してきた。

だから何を言われても、何をされても、大して心に響かなかったのだ。

それはあくまで外面の私に向けられたものだったから。

でも要さんの場合は違う。

要さんは素の私を真っ直ぐに見てくれていて、私も素の自分を曝け出して接している。

言うなれば、仮面を脱ぎ捨て、全身を隙なく覆っていた頑丈な武装を取っ払った状態である。

だからこそ、隔てるものがない今、すべてがダイレクトに心の奥まで届くのだ。

こんな経験初めてで、思わず逃げ出したくなるほどくすぐったく面映い。

「……キスを拒否しなかったってことは、亜湖ちゃんも俺と同じ気持ちだって思っていいの?」

確認するように私の想いを問われ、私は要さんを見つめ返した。

本当なら、「好き」とハッキリ言葉で伝えるべきだろう。

でも私としたことが、どうしてもその一言が口を突いて出てこない。

 ……は、恥ずかしすぎる……!

普段は遠慮なくズバズバ言うくせに、こういう時に言えないなんてヘタレすぎる。

自分がこんなに意気地なしだなんて今日この時まで知らなかった。

だが、そんな私の慌てふためく心の内など知らない要さんは、無言である私の様子から、自分の願いは叶わないようだと解釈したらしい。

やっぱり振られるのかと諦めたように、切なげにふっと瞼を伏せた。

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