訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
私が思わずふいっと顔を逸らそうとするも、要さんに両手で頬を包み込まれて阻止されてしまった。

否応なく視線を合わせられて逃げ場がない。

「相沢さんだと思ってたの? ……違うよ、全然違う。俺としては分かりやすく示してるはずなんだけど、なんで亜湖ちゃんには伝わらないのかな」

「ウソ、円香さんじゃないんですか!?」

「なんでそう勘違いしたのか逆に聞きたいよ」

「えっ、じゃあ要さんの好きな人って……?」

「亜湖ちゃんだよ」

目を見つめながらハッキリとストレートに言われて、私はぶわっと顔が赤くなった。

好きな人から好きだと言われて、心が歓喜に湧いている。

 ……ええっ、これは夢!? 本当に!?

失恋確定だと思っていたのから一転、突然降って湧いてきた幸運に私は頭が真っ白になる。

そんな私を要さんは愛おしそうに見つめた。

「ああ~ヤバイ。亜湖ちゃんが信じられないくらい可愛い。めちゃくちゃキスしたい。……嫌だったら言って?」

そしてまるで脳内で考えていることを垂れ流したような煩悩溢れる台詞を口走ると、要さんは私の方へ顔を近づけてくる。

どんどん近づく距離に、心臓が激しく脈打ち、今にも爆発してしまいそうだ。

人生で初めてのキスというわけでもないのに、私は未だかつてないほど胸が高鳴っていた。

ついに唇と唇が触れ合いそうな距離にまで近づき、私はそっと瞼を閉じる。

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