訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
 ……ダメ! このままじゃ誤解させちゃう!

私は要さんを引き留めるように慌てて口を開く。

「要さん! えーっと、あの、私、『本意ではないお見合いを潰して欲しい』っていうのも確かに望みではあったんですけど、実はもう一つ、本当の望みがあるんです」

「……本当の望み?」

「はい。その望みは――『要さんの本物の恋人になってこれからも一緒にいること』です」

「亜湖ちゃん……!」


「好き」が言えなくて苦肉の策で絞り出した言葉だったが、要さんには私の想いが正確に伝わったようだ。

再びキスしながらギューッときつく抱きしめられた。

そして満足するまで散々唇を貪った後、要さんは小さく笑った。

「もしかしてだけど、“好き”って言葉にするのが恥ずかしかった? それで無言で固まってたとか?」

「………!!」

なんでこんな時だけ察しが良いのだろう。

女心に疎くて鈍いはずなのに。

私は頬がカッと熱くなるのを感じながら、思いっきり横を向いて視線を逸らした。


「あ~可愛い。ヤバイ、おかしくなりそうだ。亜湖ちゃんが可愛すぎて色々限界。ごめん、そんなつもりなかったんだけど……やっぱり押し倒していい?」

「えっ?」


ここはホテルの一室。

私達が座っているのはベッドの端だ。

至極簡単に艶っぽい空気がその場を支配し、要さんに押し倒されて私は柔らかなベッドの上へと沈み込んだ。

要さんが私の上に覆い被さり、呼吸を奪い尽くすような深いキスを仕掛けてくる。

私は驚きつつも、すべてを受け入れるように要さんの首に腕を回す。

そして、込み上げてくる蕩けるように甘い悦びに身を委ねた――。


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