訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる

22. 本物の恋人

「――それで、昨日聞きそびれたんですけど、どうやってお見合いのことを知ったのか説明してくれますよね?」

翌朝、私は脱ぎ散らかした服を手にバスルームへ駆け込み、シャワーを浴びて身支度を済ませると、さっそく要さんに話を切り出した。

朝が弱いらしい要さんは眠気まなこである上に、声も掠れていて若干気怠げな様子だ。

そんな姿は朝から毒々しいくらいに色気たっぷりである。

思わずぼけっと見惚れそうになるのを振り切り、資料が散らかっていた場所を片付けてから、私は椅子に座って真面目な顔で要さんに視線を向けた。

「もちろん説明するよ。ただ、その前に1本だけ電話を入れていい? ちょっと事前に確認が必要なんだ」

よく分からないが話すために電話が必要というのならば否はない。

了承すると、要さんはスマホを手に取り、私の前でおもむろに電話をかけ始めた。

「もしもし花山です。坂田さん、朝早くにすみませんが、今少しだけいいですか?」

 ……坂田さんっていうと、取材の時に一緒に来ていた担当編集者の方だっけ?

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