訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる

24. クラスアップ

ホテルから出ると、私達はそれぞれの家に立ち寄り、着替えを終えてから私の実家へと向かった。

私の父に会うとあって、今の要さんはきちんと三揃いのスーツを着込んでいる。

普段はキレイめカジュアルな服装だから、ものすごく新鮮だ。

 ……ヤバイ、似合いすぎでしょ!

ただでさえ圧倒的なルックスなのに、スーツを着ているとさらに何割か増しになっている。

こんな姿の要さんを大衆に晒せばひと騒動起きそうだ。

危機感を感じた私が、迷わず移動手段にタクシーを選んだのは賢明な判断だったと思う。

そうして父との電話から約40分後。

実家へ到着した私達は、すぐに現れた使用人頭の森本さんに案内され、応接室へと通された。

応接室の中には、重厚感のある革張りのソファーにどっしりと腰掛けた父が厳しげな顔ですでに待ち構えていた。

驚いたことに父の隣には母の姿もあった。

上品に和服を着こなした母は、父とは対照的にほのぼのとした微笑みを浮かべている。

「それでは説明してもらおうか」

軽く挨拶を交わして向かい側のソファーに腰を下ろすと、父は間髪を入れずに本題へ切り込んできた。

予想通りの展開だったため、私はこくりと頷き、小さく息を吸い込んでから落ち着いて話し始める。

「こちらは葉山要さんです。先程お父様に電話でお話しした通り、お見合いの途中で要さんが現れて、私をその場から連れ出してくれたんです。菅野さんには悪いんですけど、あの場にいるのが私はもうあれ以上耐えられませんでした」

「亜湖、お前はわしが以前訊ねた時、お付き合いしている人はいないと言っていなかったか? だからお見合いを組んだんだが。彼はお前の何なんだ?」

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