訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
「はいはい、分かりました。お手上げです。そんなに言うんなら素でいかせてもらいます。後から文句言わないでくださいね?」

「お! 雰囲気変わった!」


結局、私は早々に抵抗するのを諦めて、仮面を脱ぎ捨てた。

もうノートを読まれてしまっているのだから、取り繕う意味もない。

色々バレてしまっている相手を前に愛され女子を演じるきまりの悪さに比べれば、素で接する方がマシだ。

まぁ、ある種の開き直りである。

 ……それにこれは私の感覚的な勘だけど、この人、変な人ではなさそうだしね。たぶん。


「それで? 私にボロクソ言って欲しいんでしたっけ? あなたやっぱり変態なんじゃないですか? 気持ち悪いんですけど」

取り繕うのを潔ぎよく放棄した私は、さっそくさっきは口に出来なかった言葉も本人向けて真正面から堂々と言い放ってやった。

だけど辛辣な台詞に男性がショックを受ける様子は微塵もない。

むしろ端正な顔を綻ばせて実に楽しげだ。

 ……やっぱりドMなんじゃ……。

一度は本人に否定されたものの、そんな疑惑が再度浮上してくる。

「いいね! そのストレートな物言いで、君の感じたままにぜひボロクソ斬って欲しい。俺は率直な意見が聞きたいんだ」

私が笑顔をすっかり捨て去り、眉間に皺を寄せて疑わしげな視線を投げかけるのも無視して、男性は「待ってました!」と言わんばかりに整った顔に笑顔を浮かべた。

そして『グチグチノート』を私に返すと、続いて今度は鞄から意外な物を取り出したのだった。


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