訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
そう言っていつも通りにっこり微笑んでみるが、なんだか非常に居心地の悪さを感じる。

なんていうか、ものすっごくやりにくい。

その理由は明白だ。

私を見つめる男性の目が、まるで「その外面は作り物で、お前の素はそれじゃないだろ」と雄弁に語っている気がするからだ。

思わず弧を描いた唇の端がヒクヒクと引き攣ってしまう。

「率直な疑問なんだけど、やっぱり普段はあのノートみたいな毒舌は隠してるの?」

「………そ、そんな、隠してるだなんて! こっちが本来の私ですよ? あのノートはなんていうか……そう! ただのお遊びです! ちょっと遊び心で書いちゃったんですけど、見られちゃて恥ずかしい……!」

「本当に?」

「……………」

それでもなんとか誤魔化そうと苦し紛れに足掻いてみたが、やはりそう上手くはいかなかった。

じーっと見つめられて、あの落ち着いた低音の声でゆっくり問いただされると、最後には何も言えなくなってしまう。

そもそも『グチグチノート』を読まれた時点で詰んでいるのだ。

なにしろあのノートには、本当に色々赤裸々に綴っているのだから。

それこそ外面を作って愛され女子を演じていることだって当たり前のように書いてある。

「俺の前では取り繕わなくていいよ。ぜひこのノートみたいに素で接して欲しい」

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