訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
 

しかし男性はというと、端正な顔をまっすぐと私に向け、1ミリも迷う素振りを見せず、即座にこう切り返してきた。

「だからその理由を聞いてるんですけど?」

「ノートを読んでピンと来たんだ。君なら感じたままをストレートに言ってくれるって」

「はぁ、そうですか。でも私はただ不満や愚痴を吐き出してるだけなんですが」

「確かにノートに綴られた内容は君が言う通りだけど、君は吐き出すのに加えて、大体いつも次はこうしようとか、あの人はこうした方がいいとか、割と改善提案が入ってるんだよね。そこがいいと思って。たぶん君は自分では気づいてないだろうけど」

納得できる理由を引き出すべく私が問いを重ねると、最後に男性の口から思わぬ言葉が飛び出して、不覚にも私は目を瞬いた。

男性の言う通り、自分では全く意識していなかった。

 ……言われてみれば、バーッと勢いのまま書き出しながら、最後に「ああすればいいのに」「こうする方がいいのに」って付け足してるかも……?

意外にも男性には私に依頼する理由がきちんとあったようだ。

私が不覚にも納得していると、それを目敏く感じ取ったらしい男性が話をまとめにかかる。

「それじゃあ、君はこの原稿を読んで俺に感想を聞かせてくれるってことで。読むのには何日くらい必要? 1週間くらいあれば足りる?」

「えーっと、はい。まぁ1週間あれば大丈夫かなと」

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