訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
「それなら1週間後――来週日曜のこの時間にまたここで落ち合うってことでいい?」

「確かその日はニューヨークからのフライト帰りだったはずだから、できれば翌日の月曜日の方がいいかもですね」

問いかけに対し、直近のスケジュールを脳裏に思い浮かべながら私は答える。

明日から2日間オフだが、その後は国際線のフライトも控えていたはずだ。

日曜着だから無理ではないが、体力的に疲れているだろうからできれば帰って夜は家でゆっくりしたい。

「分かった。じゃあ来週月曜にまたここで」

男性はスケジュールの自由が効くらしく、平日の夜でも全く問題がないようだ。

アッサリ頷くと、これで話は一段絡したとばかりに残り少なくなったコーヒーを啜り始めた。

 ……あれ? これってもう私が依頼を引き受けることが決定してる流れ?

それだけでなく、いつの間にやらそれを前提として次に会う日まで決まってしまっている。

すっかり男性のペースに引き込まれているを今更ながらに気づいた。

ちょっとばかり悔しい気がする。

その時ふと私はここまで男性に聞きそびれていたことを思い出した。

「そういえば、名前は何て言うんですか?」

今のところ、お互い相手の職業しか知らない。

そんな相手にこれほど素を曝け出していると思うとなんとも不思議な気分だ。

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