訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
私もCAの同僚とランチに出掛けた後は、もちろんホテルの部屋でのんびり過ごしていた。

手荷物として持ち込んでおいた葉山さんの原稿をゴロンとベッドの上に寝転がってつい今しがたまで読んでいた次第だった。

「で、忖度なしでこれの感想を率直に伝えればいいんだよね?」

そこで私はふと考える。

葉山さんは口頭で聞きたいのだろうか、それとも紙に書き出されたものを読みたいのだろうか。


 ……『グチグチノート』を読んでボロクソ言って欲しいって思ったみたいだから、やっぱり書いた方がいいのかな?


そう結論付けると、私は「よし!」とベッドから体を起こし、さっそく机に向かって猛烈な勢いで紙に感想を書き殴り始めた。

ぶっちゃけ、読んでる途中から言いたいことはたくさんあった。

忌憚ない意見を求められているのだから遠慮なんてしない。

 ……ふふん、本気でボロクソに言ってやるんだから! 私にこんな変な依頼をしたこと後悔すればいいわ! 

書き出していると、どんどん興が乗ってきた。

『グチグチノート』に吐き出す時みたいに、面白いくらいにスラスラ書けてペンが止まらない。


「ふっ、ふふふふふ……!」


愛され女子の花咲く可愛らしい笑顔はどこへやら。

今の私は魔女の如く邪悪な笑みを顔いっぱいに浮かべていた。

翌日、隣の部屋に泊まっていた同僚が「昨日なんか薄気味悪い声しなかった?」と尋ねてきたけど、きっと私とは関係ないはずと思いたい。


< 34 / 204 >

この作品をシェア

pagetop