訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
「そのつもりはないですし、今後もないです」

「そうですか……非常に残念です。とはいえ花山先生に無理をさせるつもりは毛頭ないので、ご意向は承知しました」

坂田さんは時折こうして顔出しを懇願してくる。

おそらく出版社の意向もあるのだろう。

ただ、彼は一編集者として所属する出版社の意を汲みつつ打診してくるものの、しつこく言い募ってくることはなく引き際も弁えていた。

俺が本気で嫌がっているのを察してくれている。

坂田さんのこういう点が付き合いやすく、信頼に値すると思えるところだ。

 ……サイン会でのファンとの交流は、小説家として大事な仕事の1つなんだろうけど、どうしても集団って苦手なんだよなぁ。

脳裏を()ぎるのは苦々しい過去だ。



俺はこの恵まれた容姿のせいで、学生時代から面倒事にいつも直面してきた。

忘れもしない、最初の出来事は中学生の時だ。

異性を意識し始める思春期。

早熟な人は男女交際をしたりしていたが、俺はというと、女性よりも読書に夢中だった。

しかも自分が異性に好まれる容姿だということに自覚がなかった。

それが悲劇の始まりである。

ある日俺は委員会が同じになった隣のクラスの女の子と仲良くなった。

その子も読書好きで、本の趣味が同じだったのだ。

当然話が盛り上がり、本好き仲間として俺はその子に好感を持っていた。

< 56 / 204 >

この作品をシェア

pagetop