訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
「観る映画の候補にも上げてないですよね!?」

「まぁそれは、話の内容知ってるし、この映画自体も俺は公開前に観せてもらったから」

 ……確かにそれはそうだけど、そういうことじゃないッ!


やっぱり葉山さんは、全然女心が分かってない。

察しが悪くて鈍感すぎる。


「あのですね、デートってお互いを知って仲を深めるための手段なわけです。ラーメン屋じゃなくてカフェがいいのも、ゆっくり話せるからって言いましたよね?」

「この前指摘されたから、もちろん覚えてるよ。それで?」

「つまり、なんでもいいから少しでもたくさん相手のことをが知りたいんです。それが女心。なのに葉山さんは今、あえて言う必要ないって隠しましたよね?」

「隠したつもりはないけど……」

「例えば、デート中に明日JP航空の羽田発パリ行のフライトに搭乗するって葉山さんが私に話したとします。で、その時私は何も言わなかったけど、当日飛行機の中で私を見かけたら“隠した”って感じません?」

その状況を想像してみたらしい葉山さんは「確かにそうかも」とゆっくり首を縦に振る。


「まぁ私達は別に本当の恋人じゃないからいいんですけど、本物の彼女ならやっぱり教えてもらえないとショック受けますよ。彼氏の書いた小説が原作の映画なら観てみたいって絶対思うでしょうし」

「……女心って繊細だね」

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