魔力が消える前に、隣国の皇帝と期限付きの婚約を交わす
「見ててくださいね、ステファン様!」
魔力を放つと、赤い花びらが徐々に白色に変わっていく。白い薔薇を差し出すと、隣に座るステファン様の顔がぱあっと華やいだ。
「セレーヌの魔力は本当にすごいね!」
ステファン様の笑顔は輝いていた。あの頃のステファン様はよく笑ってくれた。
「あぁ……私……」
心が離れていることがわかっていてもそばにいたのは、魔力を抑えるという自分の役割のためでも、家の伝承のためでもなかったのかもしれない。
「笑って欲しかったんだ……」
ステファン様があの日のように、いつかまた私に笑いかけてくれると思っていたからそばにいた──
涙が溢れてきてその場にしゃがみ込んだ。息ができなくなりそうなほど苦しいけれど、私に残された時間はない。
私は必死に涙を拭って顔を上げると、近くに咲いている赤い薔薇に向かって魔力を放った。薔薇はあっという間に白色に変わる。
「まだ使える……早くお父様に相談しないと……」
足を踏み出すと、背後から強い魔力が伝わってきた。恐る恐る振り返ると、オレンジ色の服を着た恰幅の良い男性がこちらへ向かって歩いてくる。
これまで何度も社交場に出たけれど、初めて見る顔だ。鼻の下に生やした髭を撫でながら優しそうな笑みを浮かべているけれど、男性からは感じたことのない異質な魔力が漂ってくる。
「探しましたよ、セレーヌ様。」
「……あなたは?」
「ランスロットと申します。お隣の国ヴァルドラードより参りました。皇帝陛下の側近です。」
(皇帝陛下の側近!?)
動揺しながらランスロットさんを見たが、表情からは何も読み取れない。
「皇帝陛下の側近の方が、私になんの用でしょうか。」
「単刀直入に申し上げましょう。セレーヌ様、ヴァルドラードへ来ていただけませんか?」
ランスロットさんは髭を撫でながらなんでもないことのように告げた。空は明るく晴れ渡っているけれど、どこか遠くで雷の音がした気がした。
魔力を放つと、赤い花びらが徐々に白色に変わっていく。白い薔薇を差し出すと、隣に座るステファン様の顔がぱあっと華やいだ。
「セレーヌの魔力は本当にすごいね!」
ステファン様の笑顔は輝いていた。あの頃のステファン様はよく笑ってくれた。
「あぁ……私……」
心が離れていることがわかっていてもそばにいたのは、魔力を抑えるという自分の役割のためでも、家の伝承のためでもなかったのかもしれない。
「笑って欲しかったんだ……」
ステファン様があの日のように、いつかまた私に笑いかけてくれると思っていたからそばにいた──
涙が溢れてきてその場にしゃがみ込んだ。息ができなくなりそうなほど苦しいけれど、私に残された時間はない。
私は必死に涙を拭って顔を上げると、近くに咲いている赤い薔薇に向かって魔力を放った。薔薇はあっという間に白色に変わる。
「まだ使える……早くお父様に相談しないと……」
足を踏み出すと、背後から強い魔力が伝わってきた。恐る恐る振り返ると、オレンジ色の服を着た恰幅の良い男性がこちらへ向かって歩いてくる。
これまで何度も社交場に出たけれど、初めて見る顔だ。鼻の下に生やした髭を撫でながら優しそうな笑みを浮かべているけれど、男性からは感じたことのない異質な魔力が漂ってくる。
「探しましたよ、セレーヌ様。」
「……あなたは?」
「ランスロットと申します。お隣の国ヴァルドラードより参りました。皇帝陛下の側近です。」
(皇帝陛下の側近!?)
動揺しながらランスロットさんを見たが、表情からは何も読み取れない。
「皇帝陛下の側近の方が、私になんの用でしょうか。」
「単刀直入に申し上げましょう。セレーヌ様、ヴァルドラードへ来ていただけませんか?」
ランスロットさんは髭を撫でながらなんでもないことのように告げた。空は明るく晴れ渡っているけれど、どこか遠くで雷の音がした気がした。