溺れるほど甘い、でも狂った溺愛


気づけば、そっと微笑んでいた。

胸の奥がじんわりと温かい。


(……不思議だな。見てるだけで、頑張れるなんて)


だけど、その絵の中の光の粒を見つめていると――

なぜか、彼の声や笑顔が浮かんできてしまう。


「真白」


そう呼ばれたときの響き。

少し照れくさくて、でも、心のどこかが嬉しくて。


(……困るな)


小さく呟いて、ポスターに背を向けた。

それでも視線は何度も振り返ってしまう。


まるで、彼がそこからこちらを見ているようで。



翌日、アトリエのドアを開けると、

柔らかな光と一緒にコーヒーの香りが迎えてくれた。


神城さんは、窓際で筆を手にしながら何かを描いていた。


「おはようございます」


声をかけると、彼は振り向いて微笑む。


「真白、いらっしゃい。……来てくれたんですね」


名前を呼ばれるだけで、胸の奥が静かに跳ねた。


(やっぱり、この呼び方……心臓に悪い)

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