溺れるほど甘い、でも狂った溺愛


会場を出ると、夜風が頬を撫でた。

煌が後ろから声をかける。


「明日、きっと大丈夫です。――信じて」


その声が、胸の奥に灯りをともす。

振り返ったとき、彼の姿は作業灯の下にいて、その光の中で、少しだけ切なそうに微笑んでいた。


(……明日、何が起こるんだろう)


その夜、眠る前。

スマートフォンの後ろのポスターを見つめながら、わたしはそっと呟いた。


「――明日も、ちゃんと成功させられますように」

そう願いながら閉じた瞼の裏で、作業灯の下に立つ煌の姿が、まだ消えなかった。


< 138 / 182 >

この作品をシェア

pagetop