溺れるほど甘い、でも狂った溺愛
煌がわずかに笑う気配。
「……まあ、そんなところです」
(――やっぱり、わたしのこと……?)
胸の奥がくすぐったくなって、オーブンのタイマー音で我に返る。
焼きあがったフィナンシェを皿に並べたころ、篠原さんの声が再び聞こえた。
「原本、こちらです。どうぞ」
「ありがとうございます」
煌はページをめくってから、ふとこちらを振り向く。
「真白、見る?」
「ううん、発売日まで待つ。……そのほうが楽しみだから」
わたしがそう言うと、煌はうれしそうに微笑んだ。
「そっか。じゃあ、真白が目にしないように、これは篠原さんに持って帰ってもらいます」
その空気の柔らかさに、篠原さんが目を瞬かせる。
「……あれ?違ってたら、すみません」
「はい?」
「もしかして、やっと恋人同士になったんですか?」
煌は少し誇らしげに胸を張る。