溺れるほど甘い、でも狂った溺愛
――数日後。
昼下がりの店内は、ゆったりとした音楽と焼き菓子の香りに包まれていた。
いつもと変わらない午後。
なのに、どこか物足りない気がしていた。
(……ほんと、何を期待してるのよ)
そう自分に言い聞かせながら、レジ横に並べたフィナンシェのラッピングを整える。
ふと、カウンターの上のスマホが震いた。
通販サイトの通知――のはずが、画面に映ったのはニュースアプリの更新だった。
なんとなく開いたそのトップ記事。
そこに並んでいた見出しに、思わず指が止まった。
『若き天才画家・神城煌、最新個展を開催』
(……え?)
心臓が一拍、遅れて跳ねた。
記事を開くと、白いギャラリーの写真と、神城さんのポートレートが映し出される。
“幻想と現実の狭間を描く、神城煌の世界”
淡く滲んだ色の作品たちが並び、その中の一枚――柔らかな光の中にケーキのような円形のモチーフが描かれていた。
それを見た瞬間、胸の奥がざわついた。