溺れるほど甘い、でも狂った溺愛
「でも……そんな、お願いできません」
「いいんです。僕が描きたいんです」
「それは――」
「僕は、あなたの“味”を描きたいだけです。お願いです。描かせてもらえませんか?」
その一言に、胸の奥がぎゅっと掴まれたように痛む。
神城さんの瞳が静かに光を宿す。
「この前、マドレーヌを食べたときに思い出したんです。あなたの作るお菓子には、“言葉にできない光”がある。それを僕の絵で残したい」
言葉の一つひとつが、心の奥に深く沈んでいく。
(――光)
あの夜、彼のアトリエで見た絵。
あの“光の粒”と同じ響きを感じた。
けれど同時に、どこか胸がざわついた。
それは嬉しさと、ほんの少しの困惑が混ざり合った感情。
わたしは小さく息を吸い、静かに頷いた。
「……お願いします」
神城さんの表情がやわらいだ。
「ありがとうございます。――また、必ず来ますね。できれば真白さんがケーキを作っている様子を見たいです」
「え?」