乙女ゲームのメインヒーロー、なぜかヒロインから溺愛周回攻略されてます
「でも私、聖女なんだから罰なんか与えられなくない? あっ待って今の発言ナシ! それじゃ身分をカサに着ててカイルのお兄さんと一緒じゃん、え、どうしよう。困ったな」
後先も考えずに、カイルが侮辱されたというそれだけで、カナエは怒った。貴族社会のこの国では考えられないことだ。
兄が言った通り、旅の芸人だったカイルの母は、その美しさからホルスト国王に妾として召しあげられた。やがて王の子を身ごもったが、産後の肥立ちが悪くそのまま命を失ってしまったのだ。ホルスト王は母の見かけは愛していたが、その血の混ざった子供には興味がなかった。
とはいえ、王の血を引く子供を市井に下す訳にもいかず、王城の片隅に最低限の世話をする者だけを配置していたのだった。
王子がそんな扱いをされていてさえ、誰もカイルのことを庇ってくれなどしなかった。ましてや、最西の弱小国の特徴を持つ下民の子だ。いかな王の血を引いていようが、彼の味方などいなかったのだ。
兄王子に虐げられたことは数え切れないが、このホルスト王城では誰もカイルに手を差し伸べてくれなかった。けれど、カナエは違ったのだ。
カイルはその事実を、どう受け止めていいのか判らず、カナエの様子を窺っていたが、カナエはやがて繋いだままだったカイルの手を引き寄せてまじまじと見つめはじめた。
「いやでも本当に見る目ないよね。カイルの肌、こんな綺麗なのに。ツヤプルの秘訣教えてく欲しいくらいなのにさ」
「……お前肌って」
「嫉妬しそうなくらいだよね」
カイルの手をしっかり観察しながら、カナエは心底恨めしそうにぼやく。真剣そのものだ。
「ぷっ、ははは、何だカナエ様、前から思ってたけど面白い奴だな」
「失礼な」
憤慨して手を振り払おうとしたカナエに対して、カイルは手を引っ張り上げてそのままカナエを自分の腕の中に閉じ込めた。
「嫌いじゃねえよ」
耳元で囁いて、ぱっとカナエの身体を解放する。
「ちょ、今の……」
顔を真っ赤にして耳を押さえたカナエが口をぱくぱくとさせた。その顔が面白くて、カイルはまたつい笑いが漏れた。
後先も考えずに、カイルが侮辱されたというそれだけで、カナエは怒った。貴族社会のこの国では考えられないことだ。
兄が言った通り、旅の芸人だったカイルの母は、その美しさからホルスト国王に妾として召しあげられた。やがて王の子を身ごもったが、産後の肥立ちが悪くそのまま命を失ってしまったのだ。ホルスト王は母の見かけは愛していたが、その血の混ざった子供には興味がなかった。
とはいえ、王の血を引く子供を市井に下す訳にもいかず、王城の片隅に最低限の世話をする者だけを配置していたのだった。
王子がそんな扱いをされていてさえ、誰もカイルのことを庇ってくれなどしなかった。ましてや、最西の弱小国の特徴を持つ下民の子だ。いかな王の血を引いていようが、彼の味方などいなかったのだ。
兄王子に虐げられたことは数え切れないが、このホルスト王城では誰もカイルに手を差し伸べてくれなかった。けれど、カナエは違ったのだ。
カイルはその事実を、どう受け止めていいのか判らず、カナエの様子を窺っていたが、カナエはやがて繋いだままだったカイルの手を引き寄せてまじまじと見つめはじめた。
「いやでも本当に見る目ないよね。カイルの肌、こんな綺麗なのに。ツヤプルの秘訣教えてく欲しいくらいなのにさ」
「……お前肌って」
「嫉妬しそうなくらいだよね」
カイルの手をしっかり観察しながら、カナエは心底恨めしそうにぼやく。真剣そのものだ。
「ぷっ、ははは、何だカナエ様、前から思ってたけど面白い奴だな」
「失礼な」
憤慨して手を振り払おうとしたカナエに対して、カイルは手を引っ張り上げてそのままカナエを自分の腕の中に閉じ込めた。
「嫌いじゃねえよ」
耳元で囁いて、ぱっとカナエの身体を解放する。
「ちょ、今の……」
顔を真っ赤にして耳を押さえたカナエが口をぱくぱくとさせた。その顔が面白くて、カイルはまたつい笑いが漏れた。