乙女ゲームのメインヒーロー、なぜかヒロインから溺愛周回攻略されてます
ローブを持ち上げながらカナエが呻く。
「ごめん、ちょっと手伝って」
手招きをするカナエに、アレンは素直に従って絞るのを手伝う。
「アレンの素顔ってほんと綺麗だねえ」
その声音は、花でも愛でるような調子で、色を含んだものではない。アレンはまたため息を吐いて、手を止めた。
「……この顔のせいでちょっかいをかけられる身にもなってみろ」
「あ~そういうこともあるのか。美形も辛いね」
絞り終えるとローブをぱたぱたと振ってから、カナエは「でも」と続けた。
「そんな隠さないといけない程、やばいかな? 私的にはアーネスト様の方が美形っていうか、かっこいい気がするけど、アーネスト様は顔隠してないじゃん?」
「は?」
アレンは今、生まれて初めて、容姿について誰かより劣っていると言われたのだ。面食らって変な声が出ても仕方あるまい。ミヒャエルは金髪碧眼で、素顔のアレンと並ぶと丁度月と太陽のような見た目だ。並べれば甲乙つけがたい筈だが、カナエはミヒャエルの方が良いと言うのは、驚くことだった。
それにミヒャエルの顔がいかに麗しくて、周囲の人間が煩わしくとも、彼は王族である。顔を隠して生活することが許される筈がない。だから比べるべくもないのだが、彼女はそんなことを思いも寄らないらしい。
「僕の方がミヒャエル様より不細工ってこと?」
その声は、かろうじて笑いをこらえていたと思う。
「えっそんなこと言ってないじゃん! いや、まあ、あのアーネスト様の方が派手? というか……」
「僕の方が地味で目立たないんだ?」
「いやそうじゃなくて……もう! とにかくアーネスト様の方がかっこよく見えるってだけ! あれ、私何言ってんの、何言わせてんのばか!」
目をぐるぐるとしながら顔を真っ赤にしたカナエが、ローブをアレンに投げつける。それが面白くて、とうとうアレンは笑いがこらえられず吹き出してしまった。
「あんたミヒャエル様しか眼中にないんだね」
ケラケラ笑いが止まらないアレンを「うっさい」と膨れてカナエは不貞腐れる。
「ごめん、ちょっと手伝って」
手招きをするカナエに、アレンは素直に従って絞るのを手伝う。
「アレンの素顔ってほんと綺麗だねえ」
その声音は、花でも愛でるような調子で、色を含んだものではない。アレンはまたため息を吐いて、手を止めた。
「……この顔のせいでちょっかいをかけられる身にもなってみろ」
「あ~そういうこともあるのか。美形も辛いね」
絞り終えるとローブをぱたぱたと振ってから、カナエは「でも」と続けた。
「そんな隠さないといけない程、やばいかな? 私的にはアーネスト様の方が美形っていうか、かっこいい気がするけど、アーネスト様は顔隠してないじゃん?」
「は?」
アレンは今、生まれて初めて、容姿について誰かより劣っていると言われたのだ。面食らって変な声が出ても仕方あるまい。ミヒャエルは金髪碧眼で、素顔のアレンと並ぶと丁度月と太陽のような見た目だ。並べれば甲乙つけがたい筈だが、カナエはミヒャエルの方が良いと言うのは、驚くことだった。
それにミヒャエルの顔がいかに麗しくて、周囲の人間が煩わしくとも、彼は王族である。顔を隠して生活することが許される筈がない。だから比べるべくもないのだが、彼女はそんなことを思いも寄らないらしい。
「僕の方がミヒャエル様より不細工ってこと?」
その声は、かろうじて笑いをこらえていたと思う。
「えっそんなこと言ってないじゃん! いや、まあ、あのアーネスト様の方が派手? というか……」
「僕の方が地味で目立たないんだ?」
「いやそうじゃなくて……もう! とにかくアーネスト様の方がかっこよく見えるってだけ! あれ、私何言ってんの、何言わせてんのばか!」
目をぐるぐるとしながら顔を真っ赤にしたカナエが、ローブをアレンに投げつける。それが面白くて、とうとうアレンは笑いがこらえられず吹き出してしまった。
「あんたミヒャエル様しか眼中にないんだね」
ケラケラ笑いが止まらないアレンを「うっさい」と膨れてカナエは不貞腐れる。