乙女ゲームのメインヒーロー、なぜかヒロインから溺愛周回攻略されてます
教育係から受けた厳しい叱責を思い返して、カナエは遠い目をする。そのタイミングで、空になったカップに、侍女が新しい紅茶を注いでくれる。
「あんたって、何でそんなに殿下のこと好きな訳? いや、ミヒャエル様に魅力がないとかそんな不敬な意味じゃなくてさ。辛いことも耐えられるくらい好きってのは判るんだけど、最初からずーーっと馬鹿みたいに好き好き言ってたじゃん?」
将来の王子妃に対して充分不敬だが、それがアレンとカナエの距離感なのでカナエは一切咎めない。優秀な侍女は、必要な時以外は空気だから、会話に割り込むこともほぼない。
「えっ最初から?」
問われたことに、カナエは目を瞬かせた。
そこで思い出す。ここは1年ほど前まではゲームの世界だったということを。カナエには10周分の魔王討伐の記憶も、その前のゲームになる前に体験した魔王討伐の記憶もあるが、どうやら他の人たちは最後の10周目の記憶しかないようなのだ。
ゲームシステムの好感度引き継ぎのせいで、不思議とカナエに対する印象が初対面から良かったが、記憶自体は一周分である。だから、聖女召喚をした瞬間から、ミヒャエルに対してカナエが好意を全開にしていたのが、アレンには不思議なのだろう。
面食いだからミヒャエルに一目ぼれしたという理由なのであれば、アレンの素顔やカイルの顔にも騒いでもいい筈だが、そういう素振りも見せない。だから余計にアレンには不思議だった。
そういった世界の事情に思い至って、アレンの疑問ももっともだとカナエは思いなおす。そして笑った。
「私ね、最初はミカのこと、そんな好きじゃなかったんだよ」
「はあ?」
あの態度で?と言わんばかりのアレンの顔に、カナエは笑う。
「ミカって、公式の場では優しげ~な王子様の態度でしょ? でも普段はそうでもない……どっちかっていうと、何か武士……じゃなくて、何か硬い話し方だよね。だからとっつきにくかったの」
「あ~まあね。でも殿下、旅の間は完璧に王子様装ってなかった? あんたに対しては特に。それで好きって言ってたんじゃないの?」
「あんたって、何でそんなに殿下のこと好きな訳? いや、ミヒャエル様に魅力がないとかそんな不敬な意味じゃなくてさ。辛いことも耐えられるくらい好きってのは判るんだけど、最初からずーーっと馬鹿みたいに好き好き言ってたじゃん?」
将来の王子妃に対して充分不敬だが、それがアレンとカナエの距離感なのでカナエは一切咎めない。優秀な侍女は、必要な時以外は空気だから、会話に割り込むこともほぼない。
「えっ最初から?」
問われたことに、カナエは目を瞬かせた。
そこで思い出す。ここは1年ほど前まではゲームの世界だったということを。カナエには10周分の魔王討伐の記憶も、その前のゲームになる前に体験した魔王討伐の記憶もあるが、どうやら他の人たちは最後の10周目の記憶しかないようなのだ。
ゲームシステムの好感度引き継ぎのせいで、不思議とカナエに対する印象が初対面から良かったが、記憶自体は一周分である。だから、聖女召喚をした瞬間から、ミヒャエルに対してカナエが好意を全開にしていたのが、アレンには不思議なのだろう。
面食いだからミヒャエルに一目ぼれしたという理由なのであれば、アレンの素顔やカイルの顔にも騒いでもいい筈だが、そういう素振りも見せない。だから余計にアレンには不思議だった。
そういった世界の事情に思い至って、アレンの疑問ももっともだとカナエは思いなおす。そして笑った。
「私ね、最初はミカのこと、そんな好きじゃなかったんだよ」
「はあ?」
あの態度で?と言わんばかりのアレンの顔に、カナエは笑う。
「ミカって、公式の場では優しげ~な王子様の態度でしょ? でも普段はそうでもない……どっちかっていうと、何か武士……じゃなくて、何か硬い話し方だよね。だからとっつきにくかったの」
「あ~まあね。でも殿下、旅の間は完璧に王子様装ってなかった? あんたに対しては特に。それで好きって言ってたんじゃないの?」