乙女ゲームのメインヒーロー、なぜかヒロインから溺愛周回攻略されてます
「殿下が宿で待ってるんだから、早く帰ろ」
アレンが手を振ると、その手を聖女がいきなり掴む。
「な、なに」
「怪我してるよ!」
「ああ……こんなのすぐ治るでしょ」
いつの間についたものか、手の平に血が滲んでいる。
「だめ、すぐ治さなきゃ」
言って、聖女はすぐに祈り始めた。
聖女の祈りだって、魔力を使う。かすり傷にまで使っていたら際限なく魔力が必要になってしまうから、アレンはいつも彼女の治癒を断っていた。けれど、聖女はお構いなしに祈りを捧げる。
「魔力勿体ないじゃん」
そう言って渋面を作る割りには、アレンはまんざらでもない。正直なところ、聖女がアレンの心配をしてくれること自体は、悪い気がしなかった。
「はい、治ったよ。次はすぐ教えてね」
聖女が微笑んでアレンの手を離そうとした時、聖女に大きな影ができた。不意に聖女の頭上にワイバーンが現れたのだ。
奇声をあげてワイバーンが、その爪を聖女に向ける。
「危ない!」
アレンは考える間もなく、聖女の手を引き寄せて腕の中に納め、ワイバーンの凶刃をその背中に受ける。
「アレン!」
「……アイス、ランス……っ!」
かろうじて向けた杖から、放たれた氷の槍はワイバーンの身体を貫き、葬った。サラサラと消えていくワイバーンの身体を見届けてから、アレンはうつ伏せに倒れこんだ。
「……っ」
「やだ、アレン! アレン、しっかりして!」
「……こんな、傷、どうってことない」
どくどくと流れ続ける血と、激しい痛みでもはやアレンは音もほとんど聞こえない。
「お願い、治って……!」
アレンの背中にすがりついた聖女の背中に、白い翼が現れた。同時に聖女の身体から光が迸り、アレンの身体を包み込む。
光が収束すると共に、アレンの背中の傷は、癒えていた。聖女の覚醒である。血のりは消えていないものの、背中には傷あとすらない。
「……あんたが、治してくれたの?」
血が足りないせいで眩暈はするが、怪我の痛みは一切なくなっている。アレンは頭を抑えながら身体を起こした。
「ッアレン!? 大丈夫!?」
アレンが手を振ると、その手を聖女がいきなり掴む。
「な、なに」
「怪我してるよ!」
「ああ……こんなのすぐ治るでしょ」
いつの間についたものか、手の平に血が滲んでいる。
「だめ、すぐ治さなきゃ」
言って、聖女はすぐに祈り始めた。
聖女の祈りだって、魔力を使う。かすり傷にまで使っていたら際限なく魔力が必要になってしまうから、アレンはいつも彼女の治癒を断っていた。けれど、聖女はお構いなしに祈りを捧げる。
「魔力勿体ないじゃん」
そう言って渋面を作る割りには、アレンはまんざらでもない。正直なところ、聖女がアレンの心配をしてくれること自体は、悪い気がしなかった。
「はい、治ったよ。次はすぐ教えてね」
聖女が微笑んでアレンの手を離そうとした時、聖女に大きな影ができた。不意に聖女の頭上にワイバーンが現れたのだ。
奇声をあげてワイバーンが、その爪を聖女に向ける。
「危ない!」
アレンは考える間もなく、聖女の手を引き寄せて腕の中に納め、ワイバーンの凶刃をその背中に受ける。
「アレン!」
「……アイス、ランス……っ!」
かろうじて向けた杖から、放たれた氷の槍はワイバーンの身体を貫き、葬った。サラサラと消えていくワイバーンの身体を見届けてから、アレンはうつ伏せに倒れこんだ。
「……っ」
「やだ、アレン! アレン、しっかりして!」
「……こんな、傷、どうってことない」
どくどくと流れ続ける血と、激しい痛みでもはやアレンは音もほとんど聞こえない。
「お願い、治って……!」
アレンの背中にすがりついた聖女の背中に、白い翼が現れた。同時に聖女の身体から光が迸り、アレンの身体を包み込む。
光が収束すると共に、アレンの背中の傷は、癒えていた。聖女の覚醒である。血のりは消えていないものの、背中には傷あとすらない。
「……あんたが、治してくれたの?」
血が足りないせいで眩暈はするが、怪我の痛みは一切なくなっている。アレンは頭を抑えながら身体を起こした。
「ッアレン!? 大丈夫!?」