完璧な嘘、本当の愛

施設訪問と深い理解

週末。S.M.F児童養護施設の施設。
遠島と春菜は、一緒にこの場所を訪れていた。遠島は初めて、完全に自分の過去を春菜に見せていた。
職員たちは、二人を温かく迎えた。遠島を見ると、彼らの表情が和らぐ。「また来てくれたのか」という言葉が、彼らの何年にもわたる関係を物語っていた。
「こちらが、春菜さんですね」と年配の職員が言った。「彼、君のことをよく話してくれるんですよ」。
春菜は、その言葉に驚いた。遠島が、自分のことを職員に話していたのか。
職員は、遠島の過去を少しずつ話した。「あの子は、本当に良い子でした。自分の苦しみを誰にも言わず、この施設の利用者の皆さんのために働いてくれた」。
その言葉から、遠島の深い優しさが透けて見えた。自分の苦しみを抱えながら、他者のために行動する人間。それが、遠島だったのか。
その後、施設の利用者たちと過ごす時間。遠島は彼らと自然に接していた。困っている親の相談に耳を傾け、子どもたちと笑顔で遊ぶ。その姿は、父親のようでもあり、兄のようでもあった。
春菜は、傍らで遠島を見つめていた。彼の動きの一つ一つが、彼の優しさと献身を物語っていた。
遠島が子どもに絵本を読み聞かせている。その声は柔らかく、子どもたちの目は遠島に釘付けだ。その場面を見ながら、春菜は彼への愛が深まるのを感じた。
帰路。遠島は春菜の手を握った。
「ありがとう。来てくれて」と遠島は言った。
「こちらこそ。あなたのこと、もっと知ることができました」と春菜は返す。
「ここの人たちは、俺を拾ってくれた人たちだ。この場所なしに、俺は今、ここにはいない」と遠島は言う。「だから、ここへの支援は、俺の人生の一部なんだ」。
春菜は、その言葉の重みを理解した。遠島にとって、S.M.F児童養護施設への寄付は、単なる慈善活動ではなく、自分のルーツへの献身だったのだ。
「これからも、一緒にここへ来てもいいですか?」と春菜が聞く。
遠島は、春菜を見つめた。その眼差しに、深い喜びが込められていた。
「もちろんだ」と遠島は答えた。
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