完璧な嘘、本当の愛

職場での隠れた夫婦関係

会社。通常の月曜日。
春菜は、デスクに座り、メールチェックをしていた。一見、他の社員と何も変わらない。完璧な社会人。完璧なプロフェッショナル。
だが、その完璧さの奥には、秘密がある。
昼休み。春菜は、いつもの同僚と一緒に食堂へ向かう。個人的な悩みを打ち明けることなんて、もってのほか。
食堂で、遠島がロイジェンの営業担当と打ち合わせをしていた。彼らは別々のテーブルで食事をしている。二人が視線を交わすことはない。
だが、その沈黙の中に、深い繋がりが存在していた。
午後３時。休憩室。
遠島がメールを送る。「今夜、君のアパートで会おう。７時に」。
春菜は、その通知に気づく。返信する。「了解。待ってます」。
その短い交換の中に、一日の仕事を乗り越えるための力が込められていた。
仕事終了。午後６時。
春菜と遠島は、別々のエレベーターで建物を出た。会社の人間が見れば、何の関係もない二人だ。
だが、数分後。駅の改札脇。
誰も見ていない場所で、遠島が春菜に近づく。
「お疲れ」と遠島が小さく言う。
「お疲れさまです」と春菜も返す。
その瞬間、二人の手が触れ合う。指が絡み合う。その接触の中に、愛が流れている。誰にも知られない場所での、二人だけの絆。隠されているからこそ、その瞬間がより一層貴重に感じられた。秘密だからこそ、その価値が生まれる。
電車の中。春菜と遠島は、別々の車両に乗っている。だが、春菜は彼の存在を感じ続けている。彼もまた、彼女を感じている。
アパート到着。午後７時１５分。
遠島がドアを叩く。春菜が開ける。二人は、やっと一緒になれた。
「やっと」と遠島が言う。その言葉には、一日仕事をした疲労と、彼女への渇望が込められていた。
春菜は、彼を抱きしめた。
職場では、二人は他人のままだ。でも、ここでは違う。ここでは、二人は完全に一つになれる。
その隠れた関係が、二人の絆をより一層強くしていた。世界の誰も知らない秘密。その秘密こそが、二人の愛の最高の形だ。