メリーでハッピーなトゥルーエンドを

 だけど、頷くことも反論することもできなかった。

 郁実がそう言ってくれても、すぐに答えを出せるほど図太く強靭(きょうじん)な心臓なんて持ち合わせていない。

 さぁ、と吹いた風が頬にかかった髪をさらっていく。

「……俺は、おまえらの味方じゃねぇ。助けてもやれない」

 おもむろにそんなことを言いながら、御影が歩み寄ってきた。
 思わず郁実と顔を見合わせる。

「なに、改まって」

「分かってるよ」

「ああ、どんな選択をしようが見届けるだけだ。だからよ、最後まで投げるんじゃねぇぞ」

 思わしげに細められた赤い瞳がきらめきを帯びたように見えた。

 彼はこれまでも何度かこういうことを口にしていた。
 すべてはわたし次第だとか、運命を変えてみせろだとか。

 どれも本当は励ましでも何でもなくて、ただ自分が楽しみたいだけの煽り文句だったのかもしれない。
 どちらにしても、いまは何だか眩しかった。

「……うん、わたしは諦めない。ちゃんと選ぶよ」

 傷や絶望が待ち受けていると分かりきっていても、逃げたり投げ出したりはしない。

 “今日”の結末はわたしに懸かっているんだから。

 少しばかり霧の晴れた視界で彼を捉えると、おかしそうにくしゃりと緩めた笑みが返ってくる。

「似たもの同士だな。同じようなこと言ってやがる」

「え?」

「……だから心配になる」

 御影の言葉に戸惑うわたしをよそに、郁実はそう言ってまた憂うような表情をたたえた。

「僕と同じこと考えてたら、最後だって命懸けで止めるよ」

「……それなら、わたしはそんな郁実を死ぬ気で止める」

「花菜」

 冗談ではなかったけれど、冗談めかして答えた。
 いっそう神妙な面持ちで憂慮(ゆうりょ)を増した郁実に、肩をすくめて笑い返す。

「心配しないで、まだ答えを出せたわけじゃないし……。とにかく、柊先輩とは放課後にもう一度話すことになってる。それまで、郁実もわたしを信じて待っててくれないかな」

 深い色をした彼の瞳はわたしを捉えたまま、だけどまた揺れていた。
 ややあって息をつく。

「…………分かった」

 実際には半分も納得していないだろうし、引き下がるつもりもないはずだ。

 それでも、一旦素直にきびすを返してくれた郁実の後ろ姿を見送る。

「────御影」

 目を逸らさないまま呼びかけると、隣に立つ彼がこちらを向いた気配があった。

「何だ」

「わたし、分かってた。ああ言えば郁実は頷いてくれるって」

 信じて待ってて、なんてずるい言葉だと我ながら思う。
 分かった、以外に答えがないから。

 首を横に振れば信じていないことになってしまうし、食い下がれば(うと)まれかねない。
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