メリーでハッピーなトゥルーエンドを
「あいつからしたらたまったもんじゃないだろ。どんな気持ちで放課後まで過ごすんだろうな」
「……そうだよね」
耐えがたいほどの不安を持て余すくらい抱えながら、時間が過ぎるのを待つしかないなんて。
少なくとも大団円とはいかない結末への秒読みを。
「でも、そんなこと考えるようになったんだ。人の気も知らない悪魔だったのに」
「こうも目の当たりにしてちゃな」
御影はそう言って肩をすくめたものの、悪くないとでも言いたげに清々しい表情だった。
「それで? イクミを生殺しにしておいて、おまえはどうするんだ」
この状況でわざわざそんな言葉を選ぶなんて、とことん性格が悪い。
むっとするけれど、反論の余地はなかった。
実際、いまわたしが彼を苦しめていることに変わりはないから。
砂時計を取り出すと、さらさらと落ちていく砂を眺めた。
「わたし、何もできてない……」
短い人生で、という意味でも、このタイムリープで、という意味でも。
何も成していないし、自分のせいで郁実を失い続けた。
御影が言っていたみたいに、運命を変えるなんて大それたことも叶わなかった。
手も足も出ないでただもがいていただけ。
「そうだな。期待してたような壮大な展開にならなくて残念だ……って言いたいところだけど。予想以上に面白かったぜ、本当に。俺としては既に満足だ」
「御影はどんな結末でもそう言いそうだね」
「そんなことねぇよ。砂時計を渡したのがおまえらだったからこそだ」
急に褒められたみたいな妙なくすぐったさを覚えて、無意識に頬が綻んでいた。
そうやって笑ったら、頭の中も心も自然と晴れた気がする。
「……本当は分かってるの。わたしがどうするべきか」
「どうするべきなんだ?」
「わたしは弱虫だから、自分が生きてればそれでいいなんて思えない。郁実と一緒に明日を迎えることが、わたしにとっての“ハッピーエンド”だけど……」
それは、玲ちゃんが亡くなることを意味する。
彼女の死を踏み越えて、柊先輩の心を踏みにじって、その上で自分だけが幸せになるなんてきっと耐えられない。
「柊先輩も言ってたよね、死ぬはずだったのはわたしだって。だから、玲ちゃんを巻き込まないでそうするしかない。それが正しい運命なら」
「そうか」
御影は宣言通り否定も肯定もしないで、ただわたしの決断を受け止めるだけだった。
残酷でもあり、救いでもある。
「でも。でもね、わたしがそうしたら……郁実が繰り返した時間が無駄になる気がして。わたしのために何度も命を懸けたことも、ぜんぶ意味がなくなっちゃう」