メリーでハッピーなトゥルーエンドを
わたしの前に立ち、天使と対峙する背中を見て、不思議とまた心がほぐれるのを感じた。
悪魔が落ち着く相手になっているなんてまったく笑えないのに。
(でも……御影なら来てくれると思った)
理屈じゃなくて直感的に、これまで関わってきて分かったんだ。
悪魔は天使とは対照的で、基本的に意地悪で自己中心的でサディスト。
御影が、かもしれないけれど。
それでも魂がもらえるからか、契約者には終始従順だ。
望めば何にでも力を貸してくれる。
たとえ、正しさに背いても。
「まったく……」
ふと、真白さんが息をつく。
拘束されていない方の手で棘だらけの蔦に触れると、それははらりと切れて落ちた。
「邪魔しないで。彼女を殺めることがわたしの使命なの」
「おまえこそ邪魔するな。カナの選んだ結末を」
驚いて目を見張った。
そんなことを言ってくれるなんて思わなくて。
最後まで見届ける、とは確かに言ってくれたけれど、それはただ傍観者に徹するという意味ではなかったんだ。
「春野さんの答えはまだ聞いてないけど……。宣言通り、決めたってこと?」
同じく気圧されていた柊先輩が、我を取り戻して尋ねてきた。
切実な瞳に捕まって揺さぶられる。
分かっていた。
彼の中での結論も、わたしの取れる選択肢も、ひとつしかない。
「わたしは────」
「本来の運命をたどり直す。……そうだよね」
はっと顔をもたげる。
言葉の先を上から紡いだのは、わたしでも柊先輩でもなく、郁実だった。
「郁実……」
「誰が何と言おうと花菜のことは死なせない」
わたしから目を逸らすことなく言うと歩み寄ってくる。
きっと、御影と同じで最初からこの場にいたのだと思う。
校舎の死角にでも隠れていたんだろう。
わたしを気にかけてくれるひたむきさや“今日”一日の心情を思えば、驚くまでもなかった。
「……ちょっと待って。本来の運命を、って言ったよね。なのに“死なせない”なんて矛盾してる」
柊先輩が鋭く口を挟む。
それでも、その声色は決して冷たくはなかった。
「してないです。あのとき、事実として亡くなったのはあの子で……花菜は助かった。その結果がすべてだから」
「何が言いたいの?」
「それが“本来の運命”ってことです。僕はそう捉えてる。先輩はただ希望に縋って、可能性を信じたいだけじゃないですか? そのために花菜を殺して、それさえ正当化して」