メリーでハッピーなトゥルーエンドを

 気まぐれな彼がせっかくくれたヒントを、ないがしろにするわけにはいかない。
 原点回帰して“今日”変わったことを探すべきだろう。

「わたしが行動を変えすぎると、どれが御影の言うような“変化”なのか気づけないから」

 たとえば先ほどの真白先輩との接点や会話も、わたしが動いたことに付随(ふずい)するものなのか、この時間に来ればもともとこうなる運命だったのか。

 自分次第であれこれ変わってしまうなら、正しく見定められない。
 気づくべき“変化”をきっと見落としてしまう。

「なるほど、なかなか鋭いな。その考えは確かに間違ってねぇ」

「本当?」

「けど、だからって動かなきゃ運命だって変化しねぇぞ。“今日”を変えられるかどうかは、ぜんぶおまえに懸かってんだから。忘れんなよ」



     ◇



 放課後、当初の通り郁実と別れたわたしは先に昇降口へ来て待っていた。
 “今日”は主に柊先輩を、そしてあの子のことを。

 忙しなく周囲を見回してその姿を探すけれど、なかなか現れない。

(あれ……?)

 こんなに時間がかかっていたかな。
 割とすぐに先輩が来て、声をかけてくれたような記憶だったけれど。

「ごめん、花菜。遅くなって」

 そのうち、そう言いながら郁実が歩み寄ってくる。

 おかしい。
 一度目の“今日”は、こうして彼と合流する前にふたりを見たはずなのに。

「花菜?」

「……あ、ごめん。ぼーっとしちゃって」

 笑って誤魔化しながらも胸の内を困惑が渦巻く。

 どういうことなんだろう。
 どうなっているんだろう。

 “今日”のシナリオそのものが変化した?
 これが御影の言っていたことなんだろうか。

(じゃあ、このままでいいの? 展開が変わったなら、結末も変わるかも……)

 どこかで分岐して、別の終わり方へと向かっているような気がする。
 ハッピーエンドであることを願いたいけれど、何だか妙な胸騒ぎがしていた。

(嫌な予感がする……)

 漠然(ばくぜん)として言い知れない、だけど確かな不安感。

「帰らないの?」

 扉の手前で郁実が振り向いた。
 改めて目が合ったとき、不思議な違和感が掠めていく。

(何か、変……)

 何だか郁実じゃないみたい。

 表情も言動も確かにわたしのよく知っている彼なのに、確実に何かがちがう。

 まとっている空気? 雰囲気?
 分からないけれど、今朝までの郁実と何かが変わっているような気がする。
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