メリーでハッピーなトゥルーエンドを

(確か……真白先輩?)

 真白先輩はわたしの視線を遮るように立ち、じっとこちらを見つめてきた。

 わたしより背が低いくらいなのに、凜としたその眼差しに気圧されて何だかたじろいでしまう。

「あ、あの……」

「帰って。彼には会わせない」

「えっ?」

 あまりに予想外の言葉だった。
 わたしを知っているのだろうか。

「ま、待ってください。少しだけ……」

「話す必要ない。早く行って」

 淡々とした口調からも揺らがない表情からも、一切の感情を感じられなかった。

 お人形みたい、という印象はあながち間違っていなかったのかもしれない。

 思わず彼女の肩越しに先輩を窺ったけれど、こちらを向いてくれそうな気配はなかった。
 いつもなら、わたしより先に気づいて歩み寄ってきてくれるのに。

「……はい、ごめんなさい」

 うつむいて口を結ぶ。
 謝る必要なんてないはずなのに、すっかり気後れしてしまっていた。

 ここまで取りつく島もないほど冷たく追い返されては、一度引き下がるほかにない。

 ────諦めて階段を上り始めたとき、ふと隣に人影が並んだ。
 もう何となく、見なくても誰だか分かる。

「邪魔が入ったな」

「見てたの?」

 どこからか現れた御影は、まるで先ほどの一部始終を知っているような口ぶりだった。

「当然だろ。あー、面白ぇことになってきた」

 彼はとことん自己中心的と言うか利己的と言うか、わたしの心情など常にお構いなしだ。

 命そのものや運命が懸かっているのに、言葉通りひたすら面白がっている。
 悪魔に倫理観を求める方が間違っているのだろうけれど。

「どうすんだ? このまま大人しく引き下がって、自力で探し出すか?」

「それでもいいけど……」

 答えかけて、はたと気がつく。

「そうだ、わたしが動かない方がいいかも」

 柊先輩に声をかけられる展開は、決まりきった“今日”の出来事だったはず。

 わざわざわたしが向かわなくても、放課後を待っていれば話すチャンスはある。

(確か、最初の“今日”……。あのとき、あの子も一緒だった)

 そこでちゃんと話そう。
 わたしが先輩をどう思っているのか、誤解も解かなきゃいけない。

「なんだ、つまんねぇの」

 露骨に興ざめした様子で口を曲げる彼に肩をすくめた。

「お気楽なものだね……。でも、動かず待つことにする。確かめたいこともあるし」

「確かめたいこと?」

「“変化”」
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