メリーでハッピーなトゥルーエンドを
     ◆



 案の定と言うべきか時間は巻き戻り、気がつくと再び“今日”の朝に戻ってきていた。

 “昨日”の反省を活かして、早めに春野さんと接触しておきたい。

 それだって既に手遅れだけれど、そんなの結果論だ。
 あんなことが起こるまで、こうなるなんて想像もしなかった。

 “今日”しかないのなら、その中で精一杯もがくしかない。

 ────学校へ着くと、無意識に彼女の姿を探していた。

 気づけば玲に対する心配よりも大きく意識を()いていて、いても立ってもいられなくなる。

 春野さんの教室まで行こう。
 なるべく距離を詰めて、一緒に帰る約束でも取りつけるのがスムーズだ。

 ふたりになれば、人目のないところまで誘導することも造作(ぞうさ)ない。
 そうしたら“昨日”と同じことをすればいいだけ。
 きっと、“今日”の方がうまくやれる。

 そのためにも警戒心を解いておかないと。
 そう思って踏み出したものの、はたと思い直して足を止める。

(待てよ……)

 俺のほかに砂時計でタイムリープしている“誰か”は、春野さんと近い存在のはずだ。

 憶測に過ぎないけれど、彼女を救おうとしているということは、そうと考えるのが妥当(だとう)

(じゃあ、そいつの前で俺が急に春野さんに近づいたら怪しまれるかも)

 俺と同じように記憶だってあるだろう。
 “昨日”とちがう出来事には違和感を覚えるはずだ。

 それなら、慎重にタイミングを見極めないといけない。
 春野さんがひとりになる隙を見計らって、確実に丸め込むしかないだろう。

(“昨日”みたいな無理はできないな。俺のことがバレたら厄介だし……)

 うまくいかなければ、真白さんという保険もある。
 手は尽くすけれど、どうしようもないときは彼女を頼らせてもらおう。



 機会を掴めないでいると、あっという間に放課後を迎えてしまった。

 当初の作戦通りとはいかなくても、一緒に帰ることができれば目的を果たせる。

 まだ焦らなくていい。
 俺が手を下す余地はある。

(春野さんはどこに────)

 教室を出て、昇降口に向かいながらその姿を探していたときだった。
 ガシャァン! と鋭い大きな音が突然響いてきた。

 ざわめきが増すと同時に、廊下にいた生徒たちが何事かと窓際に寄る。

 校門までの通路や校庭が見下ろせるが、いったいそこに何があるのか、それぞれ衝撃を受けたように息をのんだり顔を見合せたりしていた。

(何だ……?)

 何となく嫌な予感がした。

 窺うように窓の外を見やると、音の出どころと思しき場所に人だかりができている。
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