メリーでハッピーなトゥルーエンドを

 たまらず呟くと、立ち上がった玲は首を傾げる。

「何が? わたしが片付けたこと? 自分でやってよ、って言いたいところだけど、疲れてるなら無理しないで」

 労るような笑顔はなくて、ただ真剣にそう言われた。
 その眼差しから本気で心配してくれていることが窺えて染みる。

 だけど、何も言えずにうつむいた。
 眉根に力が込もって険しい面持ちになる。

(……無理するよ、いくらでも)

 “今日”は絶対に失敗しない。
 玲を何度もあんな(むご)い目に遭わせてたまるか。
 失ってたまるものか。

 そして少なくとも、やつらより先に俺がくたばるわけにはいかないから。



 昼休みになると、春野さんの教室へ向かった。

 彼女の周りにそれらしい人物がいないか確かめてから呼ぶ。

 だけど、当初、俺が玲を死なせないよう張りついていたみたいに、露骨(ろこつ)な守り方をしている人影は見えなかった。

 一見しただけでは砂時計の使い手は分からない。
 タイミングの問題なのかもしれないけれど。

「どうかしたんですか? 柊先輩」

 当然と言えば当然ながら、俺に殺されたことを忘れている彼女は無警戒に近づいてきた。

 人目を考えると放課後の方が手を出しやすいのは事実だけれど、この分ならやっぱり、誘い出してさえしまえばこっちのものだ。

「うん、春野さんにちょっと話があって」

「話?」

「ここじゃ何だから、屋上行かない? できればふたりきりで話したいんだけど」

 戸惑いの色を滲ませる彼女の眼差しを受け止める。
 あらゆる感情を絡め取った上で覆うような微笑みをたたえながら。

 ────屋上へ連れ出すと、ふちに並んで立った。

「それで、話って……?」

「……うーん、そうだな」

 力任せに無理やり突き落としてもよかった。
 絶対に俺には敵わないだろうから、ここまでこうしてついて来させた時点で俺の勝ちだ。

 だけど、せっかくの機会でもある。

 彼女を守ろうと砂時計を使っているのが誰なのか、探りを入れてみてもいいかもしれない。

「春野さんって付き合ってる人いたっけ? それか、好きな人とか」

「えっ? い、いないです!」

「……そっか、よかった」

 慌てたように顔の前で手を振る彼女に、ほっとしたように笑ってみせた。
 俺の行動原理が春野さんへの好意だと錯覚してくれるように。

(いない、か)

 それくらい近しい人間なら、タイムリープを繰り返してまで救おうと躍起(やっき)になるのも頷けたのだけれど。
 あるいは俺みたいに、きょうだいや家族なんだろうか。

「よかった、って」

「俺にもチャンスあるってことでしょ?」
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