メリーでハッピーなトゥルーエンドを
     ◆



 ────訪れた“変化”はだんだん、よくない方向へと向かいかけていた。

 最初に変わったのはタイムリープの条件。
 幸いにも玲が死ぬことなく、だけど春野さんが死ななくても、時間が巻き戻るようになった。

(何が起きてるんだ……?)

 わけが分からないけれど、俺の目的は変わらない。
 玲を守り抜いて春野さんを殺せばいいだけ。

 そう思って、確実に仕留めようと紅茶に毒を盛って渡したりもしたのに、彼女は死ななかった。

 代わりに死んだのは、春野さんの幼なじみ。
 いったいこれはどういうことなんだろう。

「……“今日”が変わったね。あの子を事故に遭わせようとしたけど、そのときも彼が庇って死んでしまった」

 どうやら真白さんも真白さんで手を施したようだけれど、結果は同じみたいだった。

 そのときは、信号無視で突っ込んできた大型トラックから、春野さんを庇って幼なじみが亡くなったという。

「その次も同じ。あなたが渡した毒入りの紅茶を彼が飲んだ。あの子目がけて落とした鉄骨も、彼が庇って代わりに」

「そんな……。何でだろう」

 そもそも紅茶は確かに春野さんに渡したのに、どうしてそれが彼の手に渡ったんだろう。

 彼女が気づかずあげたわけじゃないのなら、彼が不運にも口にしたわけじゃないのなら、まさか────。

(知ってて、わざと……?)

 俺や天使の狙いに気づかれたのだろうか。
 それで春野さんを庇って守ろうと……?

(“守る”?)

 もしかして、砂時計を使っていたのは彼なんじゃないだろうか。

 いや、だけどおかしい。
 時間を巻き戻す手段があるのなら、自分が死ぬ必要はないはずだ。

 薔薇がすべて枯れてしまったのだろうか。
 それでも、玲が死んで春野さんが助かったときだってあった。
 真白さんの説明通りならそれで咲き戻ったはずだから、まだ余裕はあるだろう。

 それなら、砂時計の使い手と彼とは無関係?
 何だか妙に釈然(しゃくぜん)としない。やっぱりわけが分からない。

 ────そんな“今日”が何度か続いた。

 玲も春野さんも死なない代わりに、春野さんを殺そうとすると幼なじみの彼、深山(みやま)郁実が死んでしまう結末。

 真白さんが駅のホームから線路に春野さんを突き落としたときも、例によって彼が庇って犠牲になった。

 驚いたのは、そこに玲が居合わせていたこと。

 彼がいなければ、危うく玲が代わりに死んでしまうところだった。
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