メリーでハッピーなトゥルーエンドを
そして問題は、その次に迎えた“今日”だった。
玲を死なせてしまったことももちろんだけれど、何より解せないのはその死に方。
亡くなるにしても、いままでのように春野さんを庇っての不慮の死じゃない。
明らかに誰かに殺されていた。
そのときは、真白さんが自ら春野さんを死なせたとあとから聞いた。
事故や人為的な要因を作るまでもなく、人知の及ばない力で強制的に。
そんな強硬手段に出たのは、どうしてだったんだろう。
玲が亡くなった以上、もう春野さんを殺しても意味なんてないのに。
砂時計をひっくり返し、薔薇が1輪枯れた。
天使の砂時計は彼女が言っていた通り、目的を果たせば薔薇が咲き戻る。
5回が上限ではあるけれど、そのたび猶予は増える。
けれど、代償は容赦なかった。
制約にたがわず、俺の身体は逆に蝕まれてしまう。
以前のように、刺すように胸が痛んだり鼻血が出たりするのに加え、今回は目眩や手の震えまで現れた。
薔薇が回復して表面上はリセットされても、代償はだんだん過酷なものになっていくのかもしれない。
あるいは知らないうちに、ダメージの蓄積した俺の身体が衰弱しているのかも。
いずれにしても、こうなると巻き戻しは無限じゃない。
永遠にやり直し続けることはできない。
砂時計は諸刃の剣だ。
鈍く響いてくる胸の痛みをこらえながら、廊下の突き当たり付近で佇んでいると、いつの間にか真白さんが隣に現れた。
珍しく憂うような恨めしいような硬い表情をしている。
「……“不届き者”に返された」
「どういうこと?」
「“昨日”、砂時計をひっくり返したのはやつなの」
真白さんが自ら手を下したあとの話だろう。
端的なその言葉に、はたと気がついた。
実のところ真白さんはすべてを知っているんじゃないだろうか。
“不届き者”の正体も、砂時計の使い手も、展開が変わった理由も、何もかも。
考えてみれば当たり前だ。
彼女は運命を統制する側の存在で、俺とはそもそも対等じゃない。
いまはただ単に、利害が一致しているから手を貸してくれているに過ぎないんだ。
「……わけあってあなたにぜんぶを明かすわけにはいかないけど、悪く思わないで」
ふと、強張りをほどいて彼女が言う。
心を読まれた。
そう思って、つい肩をすくめて笑ってしまう。
「分かってるよ、それでいい。でも“昨日”はどうして?」
「……どうしてだろう。自分でも分からない。これじゃだめだね、わたし」
難解そうに眉を寄せる真白さんは、自嘲するように呟いた。
強引に春野さんを死に追いやったのに合理的な理由はなかったみたいだ。