メリーでハッピーなトゥルーエンドを
♥最終章 トゥルーエンドは誰のもの?
「先輩……」
呟いた声は細く引きつり、思わず身構えてしまう。
もうわたしを殺しにきたのかと背筋が冷たくなったけれど、彼は眉を下げつつ微妙な表情をたたえる。
包丁を隠し持っている様子も、騙し討ちのようなことを狙っている不自然さもない。
慎重に歩み寄ってきた柊先輩の背後で扉が閉まる。
何となく恐怖や警戒心が跳ね上がりきらなかったのは、彼の顔色が悪かったせいかもしれない。
精神的な疲労なのか体調でも悪いのか、ひと目で弱っていることが窺えた。
「安心して。いますぐどうにかしようって気はないから」
浮かべた笑みもやっぱり弱々しい。
“昨日”みたいな余裕は持ち合わせていないみたい。
「それでも……わたしを殺すつもりですよね」
「……そっか。そんな反応するってことは覚えてるんだね」
その言葉に虚をつかれ、一瞬言葉を失う。
どうやらいまのはかまをかけたようだった。
確信を得たのか、この期に及んでわたしに好意のあるふりをするつもりもないらしく、目の前にいるのはただ等身大の柊先輩。
必要以上に恐れずに済んだのは、そのお陰もあるかもしれない。
「それを確かめに……?」
「まあ、それもあるけど。ほかにもっと聞きたいことがあって」
そう言うと、ふと視線を移した。
それを追った先にいたのは、悠々と屋上のふちに腰を下ろす御影。
にやりと意味ありげに口角を持ち上げている。
「ただ者じゃないよね。きみだろ? そっち側の協力者は」
御影を捉えたまま先輩が言った。
尋ねるというより確かめるような口調だったのは、きっと“昨日”の時点で察していたからだろう。
郁実が刺されたあと、わたしが呼んだことで突然現れた御影を見て、合点がいったにちがいない。
「だったらどうする? 俺のことも狙ってみるか?」
「いや……どうせ無駄だ。だからそんな挑発してるんだろ。その手に乗るほど俺も馬鹿じゃないよ」
「なんだ」
御影は終始余裕を崩さないまま笑っていた。
柊先輩の言う通り、面白がって挑発しているのだろう。
「あの、柊先輩。わたしも……聞きたいことがあります」
図らずも硬い声色になってしまいながらそう言うと、彼は静かに頷いて息をついた。
「だろうね。もう隠しても仕方ないし、駆け引きも意味ない。教えてあげるよ、きみの本当の結末」