虚像
自分自身が
幸せになりと願えば願うだけ、
今が幸せな状態じゃないように思えた。
他人の幸せだけを願っていた頃は
決して感じる事の無かった空虚が、
私の心を苛む最もなものになっていた。
心に穴が空いてしまったとはよく言うが、
それは何か大切なものを失ってしまった時に使う言葉だ。
私は何か失ったわけでは無いのに
心に、大きく暗く深い穴が空いてしまったようだった。
もう見てみぬふりは出来ない程
その入り口は広がってしまった。
そこに飛び込んで私との対話をする事も出来なくなっていた。
声をかけようとも震えない喉では音も出せない。
身動きも取れない闇に、丸まったまま
ただ彷徨うしか無かった。
その間も私の肉体は活動を続ける。
私の虚像であるとも知らず人々は話しかける。
虚像が私の本体であると皆が勘違いすればするほど、
私の周りの暗闇は広がってゆく。
ここから抜け出す光は、
まだ一筋も見えない。
重苦しく音も光も何も無いこの場所が、
私以外が存在しないこの場所が、
私にとっての人生であった。
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