御曹司社長の契約溺愛 シンデレラなプロポーズは、夜ごと甘く溶けて

第二十四章：因縁の終結と、絶対的な守護

琴音の妊娠が判明した後、神楽坂蓮の行動は、さらに極端になった。専門家チームの招集はもちろん、琴音の健康と安全を最優先するため、蓮のスケジュールは大幅に見直され、重要な会議すらリモートで行うことが増えた。彼の人生は、妻子の「守護」という、新しい絶対的な目標によって完全に再構築された。

そんな中、蓮のオフィスに、鳴神響がアポイントメントなしで現れた。
「神楽坂社長。奥様がご懐妊なさったとか。おめでとうございます」
鳴神は、一見穏やかに、しかしその瞳にはまだ、蓮への複雑な感情を宿していた。

「何の用だ、鳴神。私の家族の話題に、君が触れる資格はない」
蓮は冷徹に言い放った。
「落ち着いてください。ビジネスの話です。あなたが、奥様のご懐妊で事業の足並みを乱されている今こそ、私があなたの神楽坂グループを支配する最高の機会だと考えました」

鳴神は、蓮に一つの提案書を差し出した。それは、神楽坂グループの次期プロジェクトの主導権を、鳴神フーズに移譲するという、極めて大胆な要求だった。

「愛という非合理な感情は、経営者の判断を鈍らせる。その最高の証拠が、今のあなたです。奥様と、生まれてくるお子様を守りたいなら、ビジネスは私に任せるべきだ」

鳴神は、琴音の愛という弱点だけでなく、子供という新しい支配対象をも、蓮を屈服させるための武器として使おうとしていた。

蓮は、提案書を一瞥し、静かにそれを破り捨てた。
「君は、私の愛を過小評価している」
蓮は、鳴神に一歩近づいた。その眼差しには、冷徹さではなく、守るべきものを侮辱された男の怒りが燃えていた。

「鳴神。私の愛は、感情ではない。私の全存在を賭けた、絶対的な合理性だ。君が私の家族を脅威と見なすのなら、私の合理性は、君の存在そのものを不利益と見なす」
蓮は、内線で真柴を呼んだ。

「真柴。今から、鳴神フーズに対するM&Aの準備を開始する。目標は、一ヶ月以内での完全支配だ」
その宣言は、あまりにも唐突で、常軌を逸していた。鳴神フーズは、神楽坂グループに匹敵する巨大企業だ。

「正気ですか、神楽坂社長！そんな短期間でM&Aなど、不可能だ！」
鳴神は動揺した。
「不可能？私の支配対象が、私の最も大切なものに触れようとしている。その不利益を排除することに、不可能なことなどない」

蓮の視線は、もはや鳴神を見ていなかった。彼の意識は、すべて琴音と、彼女の腹の中の新しい命を守るという一点に集中していた。

その日の夜。
蓮は、徹夜で準備を整え、M&A戦略を練った。その集中力は、かつてないほど研ぎ澄まされていた。彼の行動のすべてが、愛する家族を守るという、純粋な動機に支えられていたからだ。

琴音は、心配になり、蓮の執務室に入った。
「蓮。無理しないで。鳴神社長とのことは、そんなに急がなくても」

蓮は、キーボードを打つ手を止め、琴音を抱き寄せた。
「急ぐ。君と、この子が、少しでも不安を抱く状況は、私の支配の不完全さを意味する。私は、君の愛という契約を、完璧に履行しなければならない」

蓮は、琴音の腹部にそっと耳を当てた。
「この子は、私の最も重要な被支配者だ。この子が、生まれてくる世界に、君を脅かす存在など、一切あってはならない」

二週間後、鳴神フーズの株価は暴落し、経営権は神楽坂グループの支配下に入った。蓮の合理的で冷徹な、しかし愛に支えられたM&A戦略は、完璧に成功した。
鳴神は、敗北を認め、蓮のオフィスを訪れた。

「参りました、神楽坂社長。愛は非合理だと断じたあなたの合理性が、私を打ち負かした。あなたは、愛という最大の弱点を、最大の武器に変えた」
「鳴神。君は、私と琴音の関係を、契約という言葉で汚そうとした。その代償だ」

蓮は、琴音の手を取り、鳴神の前に差し出した。
「君への最後の忠告だ。私の愛と支配は、永遠だ。二度と、私の家族に手出しをするな」
鳴神は、静かに一礼し、オフィスを後にした。彼の姿は、二度と蓮の前に現れることはなかった。

蓮は、因縁のライバルを完全に排除した。それは、ただのビジネス上の勝利ではない。愛する家族への絶対的な守護の成就だった。
蓮は、琴音を抱き締め、勝利のキスをした。

「これで、君と、この子の世界は、私だけの愛によって守られた。もう、誰も我々の邪魔をしない」
神楽坂蓮の愛の支配は、揺るぎない絶対的なものとなった。