不埒な先生のいびつな溺愛【番外編集】
1.休館日のできごと
秋のはじめ。
あと三か月もすれば受験が始まる。
土曜は図書館で勉強することが習慣となり、開館時刻である午前九時に入り口で待っていれば久遠くんと落ち合うことができる。
今日もそのつもりで朝から図書館へ向かっていたが、それまでの道のりに学生たちの姿がないことが気になった。
だいたいいつも決まったメンバーが、休日でも制服姿でここへやって来るのだが。
ひとけのないガラスの自動ドアまでたどり着いたが開かず、代わりに『祝日振替につき本日は休館です』という貼り紙がされていた。
知らなかった。ちゃんと掲示されているスケジュールを確認すればよかった。
タイムロスをどっと感じ、ガラス扉に背を向けると、誰かに見られては恥ずかしいと気づき入口から移動する。
今日も久遠くんに会えると思っていたのに、残念だ。
残念すぎてこれからどうするのかすぐには決める気にならず、図書館の庭園内にあるパンジーがみっちりと植えられた円形の花壇に向かった。
花壇の中心には、立派な台座の上で書物を読む銅像がある。
私はそれに背を向けて、花壇のレンガに腰を下ろし、鞄を抱えて息をついた。
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