明治、契約の夜に咲く恋─御曹司の溺れるほどの愛
ただ街の中で、看護婦が白衣を来て歩いていると、時々羨ましくなる。

私も看護学校を卒業したら、あんな風に働けたのかと思うと、胸が苦しくなった。

もうすぐ誠一は、高校を出て本格的に師範学校への進学するつもりだ。

何としてでも、弟を教師にしたい。

それが白河家再興の道に、繋がると思っていたからだ。

「はぁー……」

だが今の奉公の稼ぎでは、食べて行くのがやっとだ。

母の薬や弟の学費は、父の遺産から出ている。

それももうすぐ、底を尽きそうだ。

どうしたらいいか、途方にくれていた時だった。

奉公先の旦那様が、不意に私を手元に呼んだ。

「珠緒。おまえの芯の強さを買って、言う話なんだがね。」

「はい。」

旦那様は、煙草を一本吹かした。

「貿易会社の御曹司が、妾を探しているんだ。」

「妾?」

それは奥様以外に、ご主人の夜の相手をするっていうこと?
< 2 / 60 >

この作品をシェア

pagetop