明治、契約の夜に咲く恋─御曹司の溺れるほどの愛
私は翌朝、髪を整えると準備していたカゴを持って、外に出た。

見送りには、お姉様が来てくれた。

「あまり荷物は増えてないわね。」

「短い間だけでしたから。」

私は玄関を見上げた。

この家で過ごしたのは短かったけれど、決して忘れない。

旦那様に愛された事。

私の一生の宝物にしたい。

「お世話になりました。」

「こちらこそ。」

そう言って私は、来た時と同じように馬車に乗った。

「行先はご実家で、よろしいですか?」

「ええ。そうしてください。」

そう告げると馬車は動き出した。

これからどうやって、食べていけばいいのだろう。

もう弟を大学校に行かせるのは、無理なんだろうか。

ふと涙が零れた。

せめて、何か打つ込める仕事があれば、旦那様を忘れられるのに。

このぽっかりと空いた時間は、旦那様を思い出させてしまう。
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