明治、契約の夜に咲く恋─御曹司の溺れるほどの愛
「さあ、馬車に行こう。」

「えっ、あの……」

たくさんの女性の視線を横目に、私は旦那様の馬車に乗せられた。

「驚いたよ。すっかり職業婦人だな。」

「はあ。恥ずかしいですけど。」

「……看護婦をしているんだね。」

「はい。でもただの助手です。」

馬車は颯爽と街の中を駆け抜け、私の家の前で停まった。

「着いたよ。」

旦那様は先に降りて、私の手を取る。

「旦那様……」

「珠緒。こうして、毎日迎えに来てもいいかい?」

繋いだ手が、温かく染まった時だった。

「姉君。」

振り返ると学校から帰って来た誠一が、すぐ傍に立っていた。

「誠一……」

私は旦那様から、手を離した。

「あなたが、逢坂淳さんですか。」

「いかにも。君は弟の誠一君だね。」

誠一は頭を下げると、手をぎゅっと握った。

「もう、僕の学費を援助して頂かなくても結構です。」
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