明治、契約の夜に咲く恋─御曹司の溺れるほどの愛
逢坂様は、黙ってうんうんと頷いていた。

「弟さんは?確か師範学校に通っていると聞いたが。」

「はい。弟はもうすぐ卒業なので、できれば大学校まで行かせて、教師にさせてやりたいんです。」

私は両手をぐっと握った。

「お妾さんになるということは、それなりの給金を頂けるのでしょうか。母も病で薬代を必要ですし、ある程度の給金を頂きたいです。」

逢坂様は、優しい眼差しで私を見つめた。

「君の気持ちは?妻のいる男の妾になるのは、世間的にも後ろ指を刺されることが多いぞ。」

「私は……」

下を向いて、唇を噛み締めた。

「母や弟の為なら、後ろ指刺されても構いません。ご主人と枕を交わす事にも耐えてみせます。」

すると逢坂様は、はぁーとため息をついた。

「さすがは、旦那が薦めるだけある。心根が強いと聞いていたが、これほどまでとは。」

逢坂様は、立ち上がると窓の外を見た。

「だが、俺と枕を交わす度に辛い思いをさせるのは、気がすすまないな。」
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