君は俺だけのもの
黒のタートルネックにストリート系のジャケットを羽織った、明らかにこの場の空気とは違う存在感。
鋭い眼光と口元の傷痕が印象的で、何より威圧感が凄まじい。
「……ん?」
真央が小首を傾げる。
相手はどう見ても知り合いではない。
けれど彼女の表情は変わらない。
警戒心よりも、好奇心の方が勝っているようだった。
「なんでここに座ってんの?」
「えっと……日向ぼっこが好きだからかなあ?」
「は?」
男の眉間に深い皺が寄る。
「邪魔だから退けよ」
言い放つ言葉は命令形。
だが不思議と怒気はない。
ただ事実を述べるように冷たい声音だ。
それでも真央は動かない。
「もう少しだけダメ? あと五分だけ!」
「……はぁ」
深々と溜息をつくと男は隣にドサッと腰を下ろした。
驚いたのは真央の方だ。
「あ、えっ……?」
「別にお前が邪魔なら蹴飛ばせばいいだけだからな」
「そんなに嫌がらなくても大丈夫だよ〜? 私、静かにしてるから!」
そう言って再び本を開こうとする真央に、男の視線が止まった。
「……名前は?」
「へ?」
「お前の名前。知らないやつに名前聞かれたら普通警戒するだろ」
「ふふっ。でもあなたからは嫌な匂いしないもん」
「……意味わかんねぇな」
呆れつつも僅かに唇の端が上がる。
それは確かに微かな笑みだった。
「私は藤宮真央! あなたの名前は?」
「……天ヶ瀬雄二」
それが始まりだった。
その日から、キャンパス内で二人が一緒にいる姿を見かけるようになった。
鋭い眼光と口元の傷痕が印象的で、何より威圧感が凄まじい。
「……ん?」
真央が小首を傾げる。
相手はどう見ても知り合いではない。
けれど彼女の表情は変わらない。
警戒心よりも、好奇心の方が勝っているようだった。
「なんでここに座ってんの?」
「えっと……日向ぼっこが好きだからかなあ?」
「は?」
男の眉間に深い皺が寄る。
「邪魔だから退けよ」
言い放つ言葉は命令形。
だが不思議と怒気はない。
ただ事実を述べるように冷たい声音だ。
それでも真央は動かない。
「もう少しだけダメ? あと五分だけ!」
「……はぁ」
深々と溜息をつくと男は隣にドサッと腰を下ろした。
驚いたのは真央の方だ。
「あ、えっ……?」
「別にお前が邪魔なら蹴飛ばせばいいだけだからな」
「そんなに嫌がらなくても大丈夫だよ〜? 私、静かにしてるから!」
そう言って再び本を開こうとする真央に、男の視線が止まった。
「……名前は?」
「へ?」
「お前の名前。知らないやつに名前聞かれたら普通警戒するだろ」
「ふふっ。でもあなたからは嫌な匂いしないもん」
「……意味わかんねぇな」
呆れつつも僅かに唇の端が上がる。
それは確かに微かな笑みだった。
「私は藤宮真央! あなたの名前は?」
「……天ヶ瀬雄二」
それが始まりだった。
その日から、キャンパス内で二人が一緒にいる姿を見かけるようになった。