君は俺だけのもの

喫茶店で

講義後、真央は廊下の先で立ち話をしている雄二を見つけた。

数人の男子学生に囲まれている。

話している内容までは聞き取れないが、明らかに喧嘩腰だ。

雄二の周囲には常に緊張感が漂っていた。


「雄二くん?」


近づくと輪の中から鋭い目つきが向けられる。


「またお前か」

「うん! あのね──」


遮るように低く吐き捨てられた。


「こいつら鬱陶しい。失せろ」


短い拒絶の言葉。

それだけで周りの学生たちは慌てて去っていく。

残された真央に向ける視線が一変した。

柔らかいようでいて、刺すような熱を帯びていた。


「何しにきた?」

「えっと……ご飯、一緒に食べようかなって思って!」

「は?」


今度こそ明確に苛立ちが混ざった。


「お前ほんとにバカだな。俺と居ることでどんな噂が流れると思ってんだ?」

「噂?」

「俺と一緒にいると『あの女』みたいに見られるぞ。平穏な生活が終わる」


初めて聞く強い警告。

それでも真央の目は揺らがない。


「全然平気だよ! だって──」


彼女の視線が雄二の胸ポケットに留まった。

そこには一枚の写真が挟まれているのが見えた。


「大事なもの、持ってるんでしょ? 壊されたくないんだったらちゃんと守らなくちゃ! 私が一緒にいたらきっと安全だよ!」


無邪気に笑う真央を見て、雄二の表情が凍りついた。


「……ふん」


鼻で笑うとそのまま踵を返す。

足早に去ろうとした背中に真央が叫ぶ。


「待って〜! ほんとにご飯食べるだけだから!」

「……お前の好きな店に放課後行こう」

「え!? ほんとに?! やったー!」


跳ねるように喜ぶ彼女を見て、雄二の口角がほんの少し緩んだ。
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