君は俺だけのもの
放課後、繁華街から少し外れた小さなカフェ。
窓際の席で向き合う二人。
テーブルにはコーヒーカップとチョコレートケーキ。
「美味しい! ここよく来るの?」
「……まぁな」
雄二はカップの縁に指をかけながら言った。
その仕草さえどこか洗練されている。
「なんか意外だね。コーヒー屋さんなんて似合わないかも〜?」
からかうように言う真央に鋭い視線が飛ぶ。
が、すぐに逸らされた。
「家じゃ飲めないんだよ」
「あっそっか! ご家族と一緒に住んでるんだ! お父さんはどんな人なの? 厳しくて怖いタイプ?」
「……親父はもういない」
沈んだ声だった。
真央の笑顔が消える。
「……ごめん」
小さく謝罪すると雄二はフンと鼻を鳴らした。
「別に。母親もいない。施設育ちだからな。家族って概念自体ピンと来ねえよ」
「施設……?」
「ああ。ガキの頃に両親とも事故で死んだ。姉貴はいたけどな」
そこで言葉を切ると目を伏せた。
「今は連絡取ってない」
「そっか……」
しばし沈黙が続く。真央はじっと雄二の横顔を見つめた。
「寂しくない?」
「は?」
ギロリと睨まれる。
しかし真央は怯まない。
「ひとりで寂しくならない? 家族いないってさびし──」
「お前に関係あるのか?」
突き放すような冷たい声。
しかしその中に微かな揺らぎがあることに気づいてしまった。
「あるよ!」
即答だった。
雄二の表情が固まる。
「だって私たち、もう友達だもん!」
「友達……?」
「うん! 私があなたのお母さんみたいなことはできないけど……でも近くにいることくらいできるから! いつでも話聞いてあげられるよ!」
その時初めて見たかもしれない。
雄二が戸惑いのような表情を浮かべた。
「馬鹿なやつ……」
呟きながら立ち上がると伝票を掴み取る。
「送る。遅くなる前に帰れ」
「えっ!? いいよいいよ自分で帰れるもん!」
「うるさい。行くぞ」
振り返らず歩き出す背中を追いかけて真央は思った。
──なんだか、ちょっと嬉しいかも?
自分を必要としてくれる人ができた気がしたから。
窓際の席で向き合う二人。
テーブルにはコーヒーカップとチョコレートケーキ。
「美味しい! ここよく来るの?」
「……まぁな」
雄二はカップの縁に指をかけながら言った。
その仕草さえどこか洗練されている。
「なんか意外だね。コーヒー屋さんなんて似合わないかも〜?」
からかうように言う真央に鋭い視線が飛ぶ。
が、すぐに逸らされた。
「家じゃ飲めないんだよ」
「あっそっか! ご家族と一緒に住んでるんだ! お父さんはどんな人なの? 厳しくて怖いタイプ?」
「……親父はもういない」
沈んだ声だった。
真央の笑顔が消える。
「……ごめん」
小さく謝罪すると雄二はフンと鼻を鳴らした。
「別に。母親もいない。施設育ちだからな。家族って概念自体ピンと来ねえよ」
「施設……?」
「ああ。ガキの頃に両親とも事故で死んだ。姉貴はいたけどな」
そこで言葉を切ると目を伏せた。
「今は連絡取ってない」
「そっか……」
しばし沈黙が続く。真央はじっと雄二の横顔を見つめた。
「寂しくない?」
「は?」
ギロリと睨まれる。
しかし真央は怯まない。
「ひとりで寂しくならない? 家族いないってさびし──」
「お前に関係あるのか?」
突き放すような冷たい声。
しかしその中に微かな揺らぎがあることに気づいてしまった。
「あるよ!」
即答だった。
雄二の表情が固まる。
「だって私たち、もう友達だもん!」
「友達……?」
「うん! 私があなたのお母さんみたいなことはできないけど……でも近くにいることくらいできるから! いつでも話聞いてあげられるよ!」
その時初めて見たかもしれない。
雄二が戸惑いのような表情を浮かべた。
「馬鹿なやつ……」
呟きながら立ち上がると伝票を掴み取る。
「送る。遅くなる前に帰れ」
「えっ!? いいよいいよ自分で帰れるもん!」
「うるさい。行くぞ」
振り返らず歩き出す背中を追いかけて真央は思った。
──なんだか、ちょっと嬉しいかも?
自分を必要としてくれる人ができた気がしたから。
