あなたに殺された聖女の私
「殿下。お部屋に戻られますか?」
「いや……しばらく、ここで休めば問題ない。水を頼む……」
 今朝から変な話ばかり聞いている。
 イブリンも王妃も妹も、ユリセナを殺したと、そればかり。
「なぜ……ユリセナが死んだ、殺したと、そのようなことを言うのか……死体が見つかったわけでもないのに……」
 カイレムの本音が、つい、ぽろりとこぼれた。
「ええ、そうですね」
 ダリオンが水の入ったグラスを手渡しながら、カイレムの言葉に同意する。
「ただ、そう思う気持ちもわかるような気がするのです」
「ダリオン?」
 冷たい水に口をつけたカイレムは、いぶかしげにダリオンに視線を向ける。
「……いえ。王女殿下がおっしゃるように……ユリセナ殿は死してもなお、カイレム殿下を悩ます根源となっているのだと……そう思っただけです」
「ダリオン。おまえまでユリセナが死んだと、そう言うのか! 彼女が死んだというのなら、証拠を出せ。なぜ死体が見つからない?」
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