あなたに殺された聖女の私
 こんな前置きの後に続く話が、良い話であるはずがない。カイレムはそれを理解していた。
「だから、約束して。絶対に誰にも言わないって……」
「あぁ、わかった。誰にも言わない。安心して話をしてくれ」
 新妻を宥めるように、彼女の背をそっと撫でる。
「あのね、あのね……私、ユリセナを殺しちゃったの。あの子の飲み物に毒をね、入れたの。あっという間に死んじゃった……」
 イブリンの視線は宙をさまよっている。
 殺したというなら、死体はどうしたのか。聞きたいことは山ほどあったが、これ以上彼女を刺激するわけにはいかなかった。
「だから彼女、恨んで、私たちの結婚パーティーに現れたのよ……」
 イブリンの言葉を聞き、カイレムは深く息を吐いた。

 甘い蜜月の期間であるはずが、イブリンは恐怖に震え、翌日も、その次の日も寝室に閉じこもっていた。シーツを頭からかぶり、寝台の上で丸まって身体を震わせている。そんな彼女を抱く気にはなれず、カイレムはイブリンに手を出していない。
 そして今日も、彼女は寝台の上で丸くなっていた。
 仕方なくイブリンを信頼のおける侍女に頼み、カイレムは執務に戻ることにした。新妻と一緒にいても気が滅入るだけだ。
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